第三次市ヶ谷コタツ革命

あごは鉄、背中は真鍮、腹は銅の金髪である

【ご報告】SPOT編集部から戦力外通告を受けました

標題のとおりです。

わたくし山田ウェンペは、2018年3月よりおでかけ体験型メディア「SPOT」にて編集スタッフとして働いておりましたが、2019年9月30日をもちまして同サイトを運営している株式会社アドウェイズを退職することになりました。


■SPOTで何をしてきたか

SPOTでは、主に裏方として観光記事の企画や編集を行っておりました。取材先や構成案をライターさんと一緒に考えていくようなイメージです。といっても、SPOTの場合は自律的にコンテンツを作れるライターさんが多いので、僕が深く関わった記事がそう沢山あるわけでもないのですが。

 

コミットの度合いが高かった記事(一例)

・patoさんのインタビュー記事(取材同行&文字起こし、記事の構成)

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・北海道釧路市の観光記事(企画、編集)

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・大人のキッザニア潜入レポート(企画、取材日調整、編集)

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あと最近では、こうしたTwitter投稿や、Twitterユーザーの声をまとめたランキング記事なんかを作ったりもしていました。

 

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とりわけ記憶に残っている仕事は、さきほど紹介した北海道釧路市の観光記事でしょうか。なにせ自分の出身地だもんで…。

制作に取り組んだのは入社してすぐの頃でした。記事が世に出る前は、"釧路 観光"と検索すると、上位に表示されているキュレーションサイトが「まなぼっと(※)」という生涯学習施設を"絶対外さない観光スポット"として紹介しているような状況でした。

※「まなぼっと」…絵画展や書道展、様々な公演・コンサートなどが定期的に催される文化的施設。決して観光施設ではない。

いくらなんでもデタラメじゃないか、ということで釧路市の市民団体「クスろ」のメンバー・名塚ちひろさんに記事制作を依頼。「王道は外さない」かつ「知名度はあまりないかもしれないけど、地元民から愛されているお店を取り上げる」という方針で記事を書いていただきました。

公開後の反応は上々。読了率がよほど良かったのか、記事が出て二ヶ月後くらいには検索ページ上位に常に表示されるようになりました。現在はページランクがやや落ちていますが、一時期は釧路市公式の観光サイトよりも上に表示されていました。

 

釧路市のケースのみならず、粗雑な情報で埋め尽くされたインターネットを血の通ったコンテンツで切り開いていくのはとても楽しい作業でした。短い期間ではありましたが、良質な記事に数多く関われたことを光栄に思います。


■ヨッピーさんは仕事がクソ速い

また、Webライターのトップランナーであるヨッピーさんが実際に動いているところを見ることができたのも良かったです。

一番印象に残っているのは、昨年の夏頃にキャバクラヨガの記事が公開されたときのことです。

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週刊文春の報道があった翌日の午前中、編集会議で「ぼく、これから取材行ってきます!」と言って突如姿を消したヨッピーさんが、二時間後くらいに会議室に戻ってきて「これはバズるぞ~~~!」とか言いながらこの記事をモリモリ書いているのを見たときは本当に驚きました。結果、取材企画としてはテレビ・雑誌を含めた全メディアの中で最も速く世に出ることになり、PVは爆伸び。取材から仕上げまでの恐るべき速さに職人技を見た気がしました。

 

ほかにも、企画会議でベストなアイデアを捻り出すのがすごく速いとか、チンピラみたいな外見とは裏腹にめちゃくちゃ面倒見がいいとか、間近で見て思ったことは結構あります。ちょうどいま新訳の『ハックルベリー・フィンの冒けん』を読んでいるんですが、もしトム・ソーヤーが大人になったら多分ヨッピーさんのような人物になるのだろうな、と思います。


■退職理由=病、病、病

さて、そんなSPOT編集部をなぜ離れることになったのかというと、他の退職エントリのように「今より条件のいい職場に移ることになりました」みたいな話ではなくて、

ADHDに由来する抑うつで、4~6月の二ヶ月間休職したこと
・復職後、15歳の頃から患っていた甲状腺疾患(バセドウ病)の治療の影響で、体調が著しく悪化したこと
・体調不良に伴い、勤務日数や作業の質が激落ちしたこと

…などが原因です。

いや、雇用者側の立場に立てばこれ以外にも多くの事由が出てきそうな気がしますが、とにかくこの数ヶ月体調が優れず職場に幾度となくご迷惑をお掛けした結果、人事面談で「しばらく休息を取って立て直したほうがいいのでは」といった話になり、有期雇用契約が終了する運びとなりました。

こうして書き起こしてみるとやむを得ない気もするのですが、正直自分の望まない形での離職になってしまったので結構落ち込んでいます。現実の世界は、どうしてこんなにつらくきびしいのだろう…。


■支援してくれる人、大大大募集

いちおう、体調とメンタルの落ち込みからは徐々に脱却しつつあるものの、正直まだ出力が安定しないのでしばらく静養に努めたいと思っているところです。ただ、本当にお金がなくてそれどころではないというのが現在の状況です。

そこで、あまり大きな声で言えることではないのですが、金銭的に支援してくれる人を大募集したいと思います。具体的にはnoteで公開している歌集を買ってくれる人です。

 

note.mu

この短歌集『トライアウト』は、クビを予感してから現実逃避のために作り始めた短歌をまとめたものです。

最初はただ心の拠り所が欲しくて短歌を作っていたのですが、毎日コツコツ作ってたらそれなりの量になったので、この機会に公開することにしました。

ちなみに歌集のウリは、たぶん、いま日本で最も情けない歌を詠んでいることです。

契約の終わりを知らされるために動く歩道で出社している
日給をメダルの量で数えたり ジャグラーBIG 約2回分
ニッポンの二大娯楽は説教と処刑で僕はよくされている
あの娘ぼくがクレカ現金化業者から出てきたらどんな顔するだろう

 ぼくは「3番線快速電車が通過します 理解できない人は下がって*1」という歌を詠んだ中澤系さんという歌人が好きなのですが、彼のようにシステムに対する高い感受性を持った歌はさっぱり作れません。かわりに、自分でも呆れるほど情けな~い短歌ばかり書いてしまいます。もし自分に歌人を名乗る資格があるとするなら、ぼくはいま、おそらく日本でもっとも情けない歌人だと思います。

制作期間が短いのもあり、収録歌数は40首と少ないのですが、一応は根詰めて作ったものですし、ぼくはこれに値段をつけて売りたいと思います。本当に情けな~い歌ばかり詠んでますので、気になった方(というか支援してくれる方)はご購入いただけますと幸いです。

note.mu

■最後に

それで結局、SPOTで学んだことって一体なんだったのだろう…というのを振り返ると、それは誠実でないコンテンツは消えていく、ということかなと思います。

まあ「誠実である」と言ってもその形式や中身は色々とあって、自分としては"政治的、もしくは社会的な正しさ"がその核ではないかと思っているのですけど、とにかくそうした「誠実さ」を達成できていないモノやコトは世の中からどんどん消えていくでしょう(改めて確認するまでもない"当然の流れ"とも言えそうですが…)。

社会に復帰したあとのことはまだ薄ぼんやりとしか考えていませんが、社会性や政治性をうまく統合している事業を探してみたいな…などと考えている次第です。まあ、社会とか政治のことを考える前に、まず自分のことをどうにかしろよって話ではあるのですが…。

 

最後になりましたが、SPOTを通して関わった皆様へ。短い間でしたが大変お世話になりました。この1年半素晴らしい環境で仕事ができたと思います。そして編集部の方々へ。戦力になれなくて申し訳ない気持ちで一杯ですが、とにかくここで得たことを糧になんとか生存して参りますので、生暖かい目で行く末を見守っていただければと思います。

 

それでは皆様、どうぞお元気で。

 

山田ウェンペ
法政大学大学院社会学研究科中退。チームラボやLINE(Livedoorニュース)、おでかけ体験型メディア「SPOT」などを経て現在無職&静養中。歳を重ねるごとに様々な病が発覚し、いつでも生活苦に喘いでいる。趣味・特技はまさかの競馬。意外にも回収率はプラスで、週末の重賞で通院費を稼ぐ日々。2019年10月にnoteで短歌集を出しましたので、このエントリに最後まで目を通した心優しい方は購入していただけると嬉しいです。よろしくお願いします。